お金

プレシンギュラリティの要約感想!いつ起こるの?

齊藤元章さんの「プレ・シンギュラリティ」を読みました。

参考になった点を中心に要約し、感想をお伝えします。

要約

プレ・シンギュラリティとは

統計家のI・J・グッド氏は1965年に、シンギュラリティについて以下のように述べている。

超知的マシンはさらに知的マシンを開発できてしまうだろう。それにより間違いなく知性の爆発的進化があり、人類は置き去りにされて二度と追いつくことはできない。したがって最初の超知的マシンが発明されたとき、それは人類最後の発明となるのである。

レイ・カーツワイルは2045年頃にシンギュラリティが到来するといっている。

筆者はそれまでに発生する社会的変化に注目し、それをプレ・シンギュラリティと呼ぶ。

プレ・シンギュラリティは2030年頃に到来する、としている。

2020年までに1エクサフロップスの演算処理性能を持つスーパーコンピューターができる。

1エクサとは京速計算機「京」の10ペタの100倍の速度である。

このようなコンピューティングを「エクサスケールコンピューティング」と呼ぶ。

エクサスケールコンピューティングにより、様々なことが可能になることがこの本に書かれている。

太陽光発電のイノベーション

積層型太陽電池(多接合型)はコストが高いため、量子ドット方式が期待される。

化合物データベースからの最適物質の探索、発電効率シミュレーション、構造シミュレーションにエクサスケールコンピューティングが望まれる。

熱電物質

温度を下げる熱電物質。コンクリートやアスファルトに埋め込むことで、ヒートアイランド現象を緩和。

人工光合成

二酸化炭素と水からアルコールなどのバイオ燃料を作れる。エネルギー問題と温暖化問題を同時に解決。

重油産生藻類

PUFA(高度不飽和脂肪酸)を生成する藻類。例えばオーランチキトリウムの株の一種。

琵琶湖の3割程度の面積で日本の年間原油消費量を賄える試算がある。

エクサスケールコンピューティングで解析し、遺伝子操作でさらに効率の良い新種を生み出すこともありうる。

人口光合成や重油産生藻類が実用化されると、今まで排出権を取引していたような嫌われ者の二酸化炭素が貴重な資源になる可能性も。

蓄熱物質

蓄熱物質、フルバレン・ジルテニウム。分子構造の変化だけで「蓄熱と放熱」をきわめて少ないエネルギー損失のみで繰り返せる。

発電所からの発熱エネルギーのはるかに効率のよい移送方法になる。

電気に変換しないので、長距離の送電によるエネルギー損失がない。

リチウムイオン二次電池のように自然放熱、性能劣化などがない。

暖房や調理器具でそのまま使える。

熱核融合発電

原子力発電はウランやプルトニウムといった原子量の非常に大きな物質の「核分裂」から得られるエネルギーを取り出しているのに対して、熱核融合炉は、元素の中で最も原子量の小さい水素の同位体である重水素と三重水素を融合させ、2番目に原子量の小さいヘリウムと中性子を生成する「核融合」の一種によって生じる膨大なエネルギーを取り出すので、危険性ははるかに小さい。

レーザー核融合発電が実現すると、設備が小型化でき個人でも所有することができる可能性もある。

農業・漁業・畜産のイノベーション

植物工場で12期作。家庭でも所有が可能に。

閉鎖循環式陸上養殖。

スーパーコンピュータにより、効率的な交配操作や遺伝子操作が行える。
無菌室的空間で畜産。

エネルギー・食料・衣服・住居が無料に

上述したイノベーションが起これば、生活に必要なものはすべて無料になる。

仮想通貨の仕組みを応用して取引を記録する仕組み

イーセリウムという全取引を記録する仕組み。

生活に必要なものは無料でもらえる社会になり、取引に貨幣が不要になるので、貨幣がなくなる。

核兵器が無くなる

エクサスケールコンピューティングにより、強力なウィルスが作れるので核兵器を持つこと自体が危険になる。そうすると核兵器を持つことが危険になるので放棄する国が増える。

不老不死

ブルック・グリーンバーグさんという20歳なのに1歳で成長が止まっている女性のデータを解析し、現代の医学と組み合わせることで、不老不死が実現する可能性も示唆されている。

感想

今後起こるイノベーションの数々については非常に参考になった。

ただ、そこでエクサスケールコンピューティングが本当に必要なのかはよくわからなかった。

現在のスーパーコンピューターでは本当に難しいのか。

コンピューターの速さ以外に問題はないのか。

など、疑問だった。

また、「日本が最初にエクサスケールコンピューティングを作るべきだ。最初に作った国がすべてをとる」という主張はちょっと納得できなかった。

別に自国で作らなくても、他国で作られたものを買って利用するのでも同じではないのか。

おそらく筆者は日本政府から開発を支援してもらう立場にあるので、ポジショントークになってしまっている面があるのでは、と思った。

とはいえ、筆者が予想した様々な社会変革には説得力があり、参考になるものだった。