自重トレーニング(カステニクス)とウェイトトレーニングの違いを自重トレーニングのメリットとデメリットに焦点を当てながらお伝えをしていきます。多くの記事や動画はウェイトトレーニーの方が作っていて、自重トレーニングの説明の解像度が低いと感じました。この記事では純粋な自重トレーニーの私がご説明します。
もくじ
多くの記事はウェイト派の視点で説明されている
ウェイトトレーニーの方って筋トレに関しては非常に詳しくて、自重についても悪くはない、と言っているのですが、結局ある程度筋トレに慣れたらウェイトに移行しようという結論になるんですよね。
自重トレーニーとしてはちょっとその結論は違うかなと思うんですよね。
ウェイトトレーニングを否定するつもりは全くないですが、自重トレは自重トレだけでも完結できるものだと考えています。
まず自重トレーニングのデメリットから説明してきますね。
自重トレは負荷調整が難しい
これは多くの記事でも語られていることですので、軽くご説明します。
例えば主に大胸筋を鍛えるプッシュアップですが、これって初心者の方にはかなり難しい種目なんですよね。逆に上級者の方には負荷が軽すぎます。
ウェイトであれば数キロ単位でバーベルやダンベルの重さを変えられるので、自身の筋力に合う重さに簡単に調整できます。
しかも、調整しやすいということは、簡単にドロップセットを組めます。つまり、追い込むためにセットの最後の方でウェイトを少し軽くして回数を稼ぐという手法です。
とはいえ、自重でもプッシュアップの前段階に壁に対して行うプッシュアップや膝つきのプッシュアップなど、負荷を軽くする種目があるので、段階的に負荷を調整することができなくはありません。ただ、ドロップセットができるほどの小刻みな調整は難しいでしょう。
自重トレは負荷が数字で見えない
どちらかというと、負荷調整がしづらいことよりも、数字で見えないことの方がモチベーションを維持する意味で厄介だと考えています。
プッシュアップと膝つきのプッシュアップがそれぞれ何キロの負荷なのかわからないんですよね。慣れてくれば負荷の違いが体でわかるのですが、その種目をやり始めたばかりだとわかりづらいです。
ウェイトだといつまでに何キロで何回を目標にしよう!とかモチベーションを維持しやすいですが、負荷が目に見えないとなかなか目標を立てづらいです。
とはいえ、自重トレーニングも強度順にステップ化すれば、数値管理と似たようなモチベーションの維持ができなくはないです。
自重トレは部分的に鍛えるのが難しい
筋トレ用語として、単関節種目とコンパウンド種目というものがあります。前者はダンベルカールなど、一つの関節だけを動かす種目で、後者はベンチプレスやスクワットなどの二つ以上の関節を動かす種目です。
自重は基本的にほとんどがコンパウンド種目です。なので、ピンポイントに一つの筋肉だけを鍛えることが難しいです。なので他の筋肉も同時に動かすので、エネルギーや集中力を一つの筋肉に向けることが難しいのがデメリットかもしれません。
とはいえ、見た目の筋肥大という意味ではデメリットかもしれませんが、実生活やスポーツでは、一つの筋肉だけを動かす動作はほとんどありません。いろんな筋肉を連動させて動作をします。なので、ウェイトトレで一つの筋肉だけ独立して動かすことに慣れてしまうのはぎこちなさを生む可能性があります。逆に自重トレで色んな筋肉を連動させる動作に慣れておけば、実生活やスポーツでもスムースな動きができると言えます。
ボディビル日本王者の木澤さんは、私も尊敬しており、動画もよく拝見しているのですが、ポージングで滑らかに動けないとどこかでおっしゃっていました。彼はウェイトやマシーンでのトレーニングを極めていらっしゃるので、もしかしたらその辺りが関わっているのかもしれません。
自重トレは鍛えにくい筋肉がある
自重トレだと鍛えづらい筋肉があります。
例えば、三角筋(肩)の中部とハムストリング(もも裏)です。
三角筋の中部はウェイトトレならサイドレイズやアップライトロウなど、定番の種目があります。
自重トレの肩の主な種目は、パイクプッシュアップやハンドスタンドプッシュアップですが、どちらも三角筋の前部に主に効きます。中部狙いの良い種目というのが調べてもなかなかないんですよね。
ハムストリングはウェイトトレなら、ヒップスラストやレッグカールなどがあります。
自重トレの脚トレは、まずスクワットがあり、上級者は片脚スクワットになってくると思います。これらは、四頭筋(前もも)と大臀筋(お尻)が主に働くけど、ハムストリングにはほとんど効かないんですよね。ブルガリアンスクワットはある程度ハムストリングも使いますが、ウェイト無しだとちょっと物足りないかもしれません。
なので、有名な自重トレーニーの体を見ると、デカくてかっこいいのですが、やはり一般的なボディビルダーやフィジーカーに比べると、肩の横の広がりはマイルドでもも裏は薄く見えます。
とはいえ、有名な自重トレーニーの多くはボディメイク目的ではなく、マッスルアップだったりプランシェといった高度な技を目的にやっている方が多く、技に使わない筋肉はあまり鍛えないだけかもしれません。彼らが自重でボディメイクを本気でやったら、肩もかなり広げられるのかなという気がしています。
というのは、三角筋中部もハムストリングも、工夫次第では自重でも鍛えることできると私は感じています。ネットに情報が無いような種目を自分で作ることになりますが、そういう創意工夫が面白いです。
ではここからは自重トレーニングのメリットについてご説明していきますね。
自重トレは体脂肪調整機能がある
当たり前ですが、自重トレーニングは体重が重いほど負荷が重いことになります。もし体重が増えたとして、極端な話、その全てが筋肉の増加量であれば、筋力も伸びていることになるので、トレーニングがキツくなったと感じることはなく回数が落ちたりすることはないはずです。むしろ回数は伸びるでしょう。
しかし、逆に増加分が脂肪である場合は、筋力が増えていないのに負荷だけ重くなるので、回数が落ちてしまうでしょう。それでも頑張って同じ回数をやるとなると、強度が上がるので筋肉が付きやすくなり、消費エネルギーが体重増加前よりも増えることになり、脂肪が落ちやすくなります。自然と筋量に対しての脂肪量に上限がかかるようなイメージです。
筋量と脂肪量の比率は、日々のトレーニングの回数とセット数、つまり強度に反映されていると見ることができます。なので、基本的に強度を前回から下回らないようにしておけば、筋肉に比べて脂肪だけ増えてしまうことはないです。
これに対してウェイトトレーニングだと、体重の増加が全て脂肪だとしても、使用重量が上がることがあります。というのは、ウェイトトレーニングだとテコの原理が働きやすいためです。ベンチプレス一つとっても、脂肪が増えて体重が増加したとしても、使用重量が上がります。なので、前述したように、使用重量を目標に頑張っていると、筋肉は増えていないのに脂肪だけ増えているということもあり得るのです。
自重トレは骨に不自然な負荷がかからない
自重トレとウェイトトレの本質的な違いをずっと考えていて、ある考えに至りました。自重トレって、自分の体重を負荷にするのですが、そのためにターゲットの筋肉以外の筋肉を使ってる傾向が強いんですよね。
どういうことかというと、例えば、プッシュアップを考えてみます。
プッシュアップって、左右の大胸筋がターゲットです。
左の大胸筋を鍛えるためには、右の大胸筋、両腕の三頭筋、体幹を固める筋肉、脚を真っ直ぐに伸ばすための筋肉を使っていると言えます。
逆に、右の大胸筋を鍛えるためには、左の大胸筋、両腕の三頭筋、体幹を固める筋肉、脚を真っ直ぐに伸ばすための筋肉を使っていると言えます。
では、同じ大胸筋をターゲットとするベンチプレスの場合はどうでしょうか?確かに、片方の大胸筋を鍛えるために、逆側の大胸筋と三頭筋を働かせているところは同じなのです。でも、最終的に全ての負荷はどこに伝わっているかというと、身体とベンチとの接点ですよね。つまり脊柱という骨です。
なので、自重トレは筋肉を使って筋肉を鍛え、ウェイトトレは骨を使って筋肉を鍛えていると言えると考えています。
もちろん、自重トレでも骨に負荷はかかりますが、自然な動きの中でかかる重量以上にはかかりません。しかしウェイトトレの場合は人工的に負荷を選べるので、人間の身体が想定していない負荷が骨のある一点にかかってしまう可能性があります。
だからどうしたの?と思われるかもしれませんが、身体へのダメージを考えると、自重トレーニングの方が健康的と考えています。骨を使って筋肉を鍛えているとやはり骨は磨耗していきます。しかし、筋肉を使って筋肉を鍛える分には、鍛える側の筋肉が疲労してしまっても磨耗することなくきちんと回復してくれます。
人間が属する脊椎動物には、5億3,000万年もの進化の歴史がありますが、その99%以上の期間、重いものを持ち上げるという動作はありませんでした。しかし、自重トレで行うような自分の体を操作するというような動作はかなりの前の段階からあったと考えられます。お猿さんだって懸垂に近い動作してますよね。(もちろんトレーニングという意識はないでしょうが)
なので、人間の設計図である遺伝子には自重トレの方が自然にフィットしやすいですが、ウェイトトレは遺伝子が想定していないエラーが比較的起こりやすいと考えられます。
ウェイトトレーニーの方の話でよく聞くのが、頚椎や腰椎のケガです。それらのケガは、致命傷になりやすくトレーニング人生が終わってしまうリスクも高いです。
実は、自重トレーニーの方も私も含めて、ケガはよくしている印象です。しかし、頚椎や腰椎などの体の中心部分ではなく、手首、肘、せいぜい肩など、身体の外側のケガに留まっている印象です。ウェイトトレは負荷が最終的に身体の中心に集まるので、どうしても脊椎に負担がかかるのです。
自重トレは同時に柔軟性を獲得できる
自重トレはターゲットの筋肉以外の身体をウェイト化するために粘土のように変形させていると言えます。
例えば、パイクプッシュアップ、知らない方は調べていただきたいのですが、もも裏が伸びた方が、しっかり負荷をかけることができます。もも裏が硬いと、角度が緩くて負荷が小さ区なってしまいます。
パイクプッシュアップ以外でも、ターゲットの筋肉以外の身体をうまく利用してウェイト化することが求めらる種目が多いです。
なので、自重トレの色んな種目に慣れていくと、段々と柔軟性が高まっていくし、身体を様々な形にすることが上手になります。
筋肉を使うこと自体がその筋肉の柔軟性を高める効果があるので、ウェイトトレでも柔軟性は高まりますが、ターゲット以外の身体を柔らかくする効果は自重の方がずっと高いと考えています。
自重トレは左右非対称の種目が実用的
自重トレは上級者になるにつれて強度を上げるために、片脚スクワット、片手プッシュアップ、片手懸垂など、左右非対称の種目が増えていきます。ウェイトトレの場合は、単にウェイトを追加するだけで強度を上げられるので大体が左右対称の種目です。
ところで、現実の世界やスポーツでの私たちの動きって、大体は左右非対称ではないですか?
走ることもそうだし、梯子を登るのもそうですよね。ボクシングのパンチ、サッカーのキック、野球のスイング、ロッククライミングも。
もちろん、サッカーやバスケなどで、高いボールに向かってジャンプする時は両脚を左右対称な動きで使いますが、そんなに多くはないですよね。
なので、自重トレの左右非対称種目に慣れていくと、現実世界やスポーツでの動きも良くなっていくと考えられます。
自重トレはミニマリスト向け
これはよく言われることですが、ウェイトトレは設備が必要になりますが、自重トレはほとんど必要ないので、基本的にどこでもできます。
ウェイトトレーニーの方はジムが家の近くにないと気持ちが落ちつかない方が多いのではないでしょうか。ある意味、依存対象が一つ多いことになってしまいます。
思想的な話になりますが、依存対象が少ない方が、自由が大きいと私は考えています。ミニマリスト的な考え方かもしれません。
どんな環境になっても身体一つあればトレーニングできるというのは、ある意味、ジムを体の中に構築して持ち運んでいるのと同じことです。これは非常に安心感があります。
自重トレで強度を上げていくためにはスキルがいるのですが、このスキルというのはジムを所有していることと同じくらいの資産的価値があります。
ぜひ一緒に自重トレのスキルを習得していきましょう!
本記事は以上になります。以下は自重トレでのインターバルの考え方についてご説明していますので、ご覧ください。
