自重でのHIT(High Intensity Training)を実践しており、効果を感じているので、やり方をご説明します。ウェイトやマシントレーニングのイメージが強いHITですが、自重でも実践でき効果も十分にあることが分かりました。考え方とやり方をご説明します。
もくじ
プリズナートレーニングのストレートセットは伸び悩む
自重トレーニング(カリステニクス)を広めた「プリズナートレーニング」という書籍の功績は大きいですし、私もこれを読んで自重トレを始めました。非常に感謝している本です。
しかし、紹介されているメニューはストレートセットで、例えば10回3セットなどのようなメニューになっています。
ストレートセットだと、徐々に筋肥大は伸び悩み、トレーニング時間だけが伸び、1回に2〜3時間かかってしまうこともありました。
なので、次に導入したのは以下で説明している、私が考案したレップ数ディセンディングセットです。

この方法で、トレーニング時間を短くし、筋肥大も再びするようになりました。
さらに、自重トレでの追い込みの技術が身についてくると、有名なマイク・メンツァーが提唱しているHITも自重でできるのではないかと思いやってみることにしました。
つまり、メインセットは1セットのみにします。すると、以下で説明しているように、さらに短時間にできるとともに、より筋肥大もするようになりました。

では、HITについてご説明していきます。
HIT(High Intensity Training)とは?
マイク・メンツァー氏が提唱したトレーニング方法です。
HIIT(High Intensity Interval Training)とは別物です。(Iが1つ多い)
メインセットの1セットにエネルギーを注ぎ込むトレーニングのことです。
高強度、短時間、低頻度で行い、回復を重視します。
短時間と低頻度というのは、一般的にも伝わる言葉だと思いますが、高強度の意味合いが独特なので説明します。
HITでは強度を
the percentage of possible momentary muscular effort being exerted
発揮される可能な瞬間的な筋力の割合
と定義しています。
この言葉自体が、わかりにくいですが、私なりに解釈すると、あなたが持つ最大筋力を100だとして、瞬間的にどれくらい発揮できるかということです。
「瞬間的」とは?
「瞬間的」と言っているので、時間をかけて何セットもやっても強度は上がらないことになります。
陸上選手を見ても、100mの選手の方が、マラソン選手よりも、筋肉が大きいです。100mの選手は、約10秒という短時間にエネルギーを発揮するトレーニングをしているので、筋肉が肥大していると考えられます。
筋トレで言うと、最も瞬間的な単位は1レップです。なので、究極的には1レップのみに全エネルギー注ぐトレーニングが最も高強度なトレーニングになります。しかし、1レップしか挙げられない重量というのはかなりの高重量になり、怪我をするリスクが高まります。なので、マイクは6〜7レップで限界に達する重量を推奨しています。
自重で行う場合は、6〜7レップしかできない重量というのは、加重しない限り難しいです。片手懸垂などだとそういう重量にはなってくるかもしれませんが、初心者には難しいでしょう。
なので、自重トレの場合は、レップ数が多くなってしまいますが、それは仕方ないことです。できる範囲でHITを適用していけば良いと考えています。
では、どの程度のレップ数が適切かというと、セットの時間の長さで決まります。何秒以内が「瞬間的」と言えるのかを考える必要があります。
いろんな説がありますが、無酸素運動と言える運動の長さは、45秒以内だったり、3分以内とも言われます。少なくとも、5分や10分もかかってしまう運動は無酸素運動とは言えません。
なので、1セットにかける時間として、45秒〜3分で考え、その中でもできるだけ短い方がいいと考えておくべきです。この適切な時間は種目やご自身の感覚によって適切な時間を見つけていきましょう。
この時間内に上がらなくなるレップ数を行うということです。負荷の軽い種目で慣れてくると、何レップやっても3分以内に限界まで達しなくなってくるものもあります。その場合は、もっと強度を上げた種目をやるべきということになります。
ここから具体的にやり方をご説明していきます。
メインセットの前にウォームアップセット
メインセットの1セットで上がらなくなるまで行う、というお話をしました。しかし、当然、いきなりメインセットをやると、力が発揮できない可能性がありますし、怪我をする可能性があります。
なので、ウォームアップセットを事前に行います。
ウォームアップセットには、メインセットの種目の強度を落としたバージョンを行います。
例えば、メインセットが通常のプッシュアップであれば、膝付きのプッシュアップをウォームアップセットとします。
プッシュアップのような、そこまで強度が高くない種目であれば、上のようにウォームアップセットは1セットで良いでしょう。
しかし、片手懸垂のような、高強度の種目は、3ステップほどのウォームアップセットを入れた方が良いです。
チューブの補助付きの両手の懸垂⇒両手の懸垂⇒チューブの補助付きの片手懸垂⇒片手懸垂
のような形です。
チューブも強さの種類があるので、チューブの種類を変えることで、徐々に強度を上げるのもアリです。
ウォームアップセットでは疲れないように
あくまで、本番はメインセットです。なので、ウォームアップセットではメインセットの強度が落ちてしまうほど、疲れないようにしましょう。
なので、ウォームアップセットのレップ数は、少なくて良いです。特に、メインセットの直前のウォームアップセットは1〜2レップで十分です。その代わり、序盤のウォームアップセットは5レップほどやっても疲れないです。
基本的に以下で説明しているようにインターバルは短くしていくのが基本ですが、メインセットの直前のインターバルはしっかりとりましょう。あくまでメインセットにエネルギーを集中するためです。

追い込みの技術で強度を上げる
メインセットで、上がらなくなるまで行ったら、なるべく強度を上げるために、追い込みます。
自重トレで使える追い込みの技術はいくつかあります。
- レストポーズ法
- ネガティブだけ行う
- 強度を下げる
まず、最初に行うのはレストポーズ法です。
メインセットとして、ハンドスタンドプッシュアップ(HSPU)を行っている例で説明します。まず、メインセットの開始時に、ストップウォッチで時間の計測を開始します。
レストポーズ法は、簡単に言うと、短時間の休憩です。
HSPUで上がらなくなったら、一旦、足を地面について休憩します。しかし、長くなり過ぎないようにしましょう。10〜15秒程度が目安です。
そして、再度、倒立状態になり、HSPUを限界まで行います。とはいえ、できて1、2回でしょう。
もう一回レストポーズしても良いですし、レストポーズしても上がらないなと判断できるなら、次はネガティブだけ行います。
つまり、ポジティブの動作は行わず、足を地面から蹴り上げて、倒立まで持っていきます。そこで降りる動作だけ行います。ボトムまで下げたら、足を地面に付き、また、蹴り上げて倒立まで持っていきます。そこでまた降りる動作だけ行います。これを限界まで繰り返します。
これを限界まで行ったら、ストップウォッチを見て、無酸素運動の時間内かどうかを確認します。(これは常に行います)
時間がオーバーしていたら、メインセット終了です。
時間にまだ余裕があるようであれば、すぐに強度を落とした種目を行います。足を台の上に乗せて行うパイクプッシュアップです。これを限界まで行います。当然、レストポーズとネガティブだけを行う方法で、追い込みます。
まだ時間があるようであれば、通常のパイクプッシュアップに移行します。こちらも同じ方法で追い込みます。
このように、無酸素運動の時間が続く限り追い込むことで、強度を上げることができます。
メインセットの追い込み無しレップ数を伸ばすのが目標
ここで、日々のトレーニングで何を目標にすれば良いかをご説明します。
メインセットは、通常のレップのメインパートと、レストポーズ法から始まる追い込みパートに分かれます。
このメインパートのレップ数を伸ばすのを目標にすると、最適なトレーニングになります。
なので、トレーニングメモには、最低限、メインパートのレップ数は記録しましょう。追い込み部分は煩雑になるので記録しなくてもいいです。ただ、私の場合は、メインパート直後のレストポーズ法の部分のレップ数は記録しています。
追い込み部分は、次回のメインセットのメインパートの最後1レップを増やすためにやっていると考えましょう。
1部位だけなら20分以内で終わる
基本的にメインセットは1セットのみなので、ウォームアップセットを入れても、1部位だけなら20分以内に終わります。
時間がない人にとっては大きなメリットですが、人によっては物足りなくなるかもしれません。でも、必要以上にやらないようにしましょう。
追い込みがきちんとできていれば、対象部位はかなり疲労しているはずで、必要以上にやると怪我をする可能性が高まります。
さらに、回復に時間がかかってしまいます。
回復に時間がかかると、次回の同部位のトレ日までに回復が完了しておらず、強度が落ちてしまう恐れがあります。
過剰補償が完了してから次のトレーニングをする
トレーニングである部位の筋肉に刺激を入れたら、休息をしますが、疲労から回復するまでに一定時間がかかります。
これは疲労から元のレベルに戻すためだけでもある程度時間がかかると言うことです。
元のレベルまで回復した後も休息を続ければ、元のレベルを超えた成長をします。
これはHITでは
overcompensation(過剰補償)
と言います。
なので、HITでは、過剰補償のフェーズに入る前に、同じ部位の次回のトレーニングをしてしまうことを避けることが推奨されます。過剰補償のフェースに入る前というのは、元のレベルにも戻っていない可能性があるので、そのまま続けるとどんどん筋力が落ちてしまう可能性があります。
なので、前のトレーニングよりレップ数などの強度が落ちてしまった場合は、トレーニング頻度を上げるのではなく、1サイクルにかける日数を増やして頻度を下げて休息の時間を延ばすことをまずは検討しましょう。そうすると、どんどん強度が上げられることが多いです。
例えば、7日で1サイクルで回していたところ、強度が落ちてしまうようであれば、10日で1サイクルなどに変えるということです。
部分疲労の管理と全体疲労の管理
上述した疲労のお話は、ある部位について疲労、つまり部分疲労についてでした。
部分疲労については上のやり方で管理しましょう。つまり、毎回の強度が徐々にでも上げられるような頻度にするということです。強度が下がってしまうようであれば、頻度を下げて休息の時間を延ばすということです。
ただ、部分単位でいえば強度が上がっていて疲労管理は問題ないと思っていても、身体全体には疲労が蓄積している可能性があります。
身体全体の疲労は自分では分かりにくいのですが、日々の生活がだるくなってしまったり、免疫が落ちて風邪や感染症になりやすくなったりします。また、いろんな種目で使われる肩、肘、手首などの関節部分にも疲労が残り、痛みにつながったりします。
そうすると、強度が上がりにくくなったり、病気や怪我をしてしまって強制的に長期の休息をせざるを得なくなったりします。
なので、全体疲労にも注意を向けましょう。
例えば、だるいなと思ったら、その日はトレーニングをしないのも良いです。
風邪をひきやすいなと思う方は、トレーンングサイクルの日数を延ばして頻度を落とすなども検討しましょう。
さいごに
自重で行うHITのやり方をご説明しました。
追い込みの技術がないと、メインセット1セットだけで追い込むというのが難しいかもしれません。しかし、ある程度上達してきたら、ぜひHITに移行してみてください。
短時間なのに筋肥大効果を実感できるはずです。